9月21日に召集された臨時国会は、その冒頭から混乱し、機能停止状態にありました。これは自民党を始めとする与党の無謀な国会運営に野党が反発し、ほとんどの審議を拒んでいたためです。
私は現在「災害対策特別委員会」で民主党筆頭理事を務めています。野党第一党である民主党の筆頭理事は、野党の代表として与党筆頭理事と共に委員会運営に責任を持つ立場にあります。この責任者として「災害を政争の具にすべきではない」と考えた私は、党内、野党間そして与党と調整をして、東海豪雨や鳥取県西部地震への対応を議論するために、委員会を開催しました。しかし、これはほとんど唯一の例外であり、その他の委員会は開会中でありながら、全く議論が行われていませんでした。

 その原因は、与党が来年行われる参議院比例選挙に「非拘束名簿式」を強引に導入しようとしていることです。発端は、総選挙直後に発足した第2次森内閣で金融再生委員長に任命された久世氏が、任命直後に辞任したことです。久世氏は、所管する金融業界を含めた特定の企業から莫大な政治献金を受け取っていました。そしてこの献金を「党費」として自民党に納めることによって、参議院比例代表選挙における名簿順位を上げていたのです。この問題は、明らかに自民党内部の問題であり、参議院選挙制度そのものの問題ではありません。しかし自民党はこれを制度の問題にすり替え、来年行われる参議院選挙の制度を変えようとしたのです。

 自民党の真意は、久世問題の再発を防ぐことではありません。実は、今回与党が参議院比例代表選挙に導入しようとしている「非拘束名簿式」については、本年2月に自民党も含めた全ての党で「来年の参議院選挙には導入しない」という合意をしているのです。この自らも入った合意を、自民党が破棄することになった原因は、6月の総選挙です。この選挙では自民党は敗退しましたが、とりわけ比例選挙における得票数が、小選挙区における得票数より800万票も少ないことに危機感を持ちました。来年の参議院比例選挙でも同じ様な結果となれば、自民党単独ではもちろんのこと、自民・公明・保守の連立でも過半数の確保が難しくなると考えたのです。数十年にわたり選挙で戦ってきた公明党とまで手を組んで確保した参議院の過半数を失うことになりかねないのです。そこで、現行の政党名で投票する参議院比例代表選挙に、候補者個人の名前でも投票できる「非拘束名簿式選挙」を、何が何でも導入しようとしているのです。

 通常の政策課題であれば、国会で与野党が議論を行うことで双方の意見の違いを明らかにし、最終的には選挙で国民の審判を仰ぐということができます。しかし、今回はこの国民の審判を仰ぐべき選挙制度そのものを、自らの都合で勝手に変えようとしているのです。選挙制度は民主主義の基盤であり、国民全体の財産です。決して一部の政党のものではありません。従って、今までも選挙制度を改正するときには、時間をかけて議論を行い、最終的には与野党合意の下で、実現してきました。しかし今回の与党は、野党の意見に聞く耳を全く持たず、ただひたすら成立することだけを目指して、強行してきたのです。全政党の合意をないがしろにして、始めから野党の意見に聞く耳をもたない与党につきあって、国会審議に応じてしまえば、「数の力」で押し切られることは目に見えていました。そこで全野党が一致協力して、審議拒否を行ったのです。またこれは参議院の選挙制度ではありますが、先ほど述べたように「選挙制度は国民の財産」ですので、衆議院でも審議拒否をしたのです。

 自分たちが勝つことを目的に、選挙制度をまるで我がモノのようにして、勝手に変更しようとする与党の「動機」が、最大の問題です。しかし導入しようとされている「非拘束名簿式」選挙制度そのものにも、多くの問題があります。
 中でも最大の問題は「横流し」です。「非拘束名簿式」選挙は、政党名・候補者個人名いずれでも投票できます。しかし候補者個人の名前が書かれた投票も、一義的にはその候補者の所属する政党の得票になります。そしてこれと政党名による得票数を足したものが、その政党の得票数となり、これを基準に議席を割り振るのです。その上で、獲得した議席の範囲で、個人名得票数が多い人から順に当選が決まるという制度です。このような選挙制度の下で、仮に国民的人気の高い有名人が立候補したとすると、その候補者だけで何百万票という得票を集めることが予想されますが、この何百万票という得票は、その候補者の属する政党の得票となるのです。この場合、もちろんこの有名人は当選することになりますが、莫大な得票数はその人ばかりでなく、他の人の当選も可能にします。このように、有権者が当選させたいと考えた候補者ばかりでなく、その他の人にもその効果が及んでしまうことを「横流し」と言います。結果的に、有権者がある候補者に投じた一票が、その人が属する政党(仮にその政党が嫌いであっても)への一票になるばかりでなく、全く知らない候補者の当選まで可能となるのです。これは有権者の正当な選択の権利を阻害するものですが、一方で導入を強行する自民党の狙いはまさにここにあり、このような選挙制度にすることによって、来年の参議院選挙に勝とうとしているのです。この効果は、有名人を候補者とすれば、いずれの党でも得られることができます。しかし、問題はそのような勝ち負けではなく、有権者の選択が、政治状況に的確に反映されないことなのです。

 また実際に選挙を行う上でも、大きな問題があります。「非拘束名簿式」の候補者の選挙区は、全国になります。そのため莫大なお金がかかるばかりでなく、候補者個人の身体的な負担も非常に過大となります。事実、同じく全国を選挙区とし「銭酷区」「残酷区」と呼ばれて廃止された「参議院全国区選挙」は、「五当四落(5億円使えば当選、4億円だと落選、という意味)」と言われ、また候補者が選挙直後に死亡してしまう例もありました。今回の改正のきっかけは、久世前金融再生委員長の「政治とカネ」の問題でした。しかし、与党が導入しているこの制度は、さらに選挙にお金がかかる制度なのです。ここからも、今回の与党の狙いが、久世問題の再発防止でないことは明らかです。

 審議拒否は、私たちにとっても望むところではありません。しかし、審議に応じてしまえば、選挙制度を自らの都合だけでいじろうとする与党に手を貸すことになりかねません。そこで審議を拒否し、国民の皆さんに現在我が国の民主主義が危機に陥っていることを、理解していただきたかったのです。参議院議長を辞任に追い込んでまで、強行する与党の姿勢は異様ですらあります。このような暴挙を行う現在の与党に政権を任しておくわけにはいきません。いかに選挙制度を変えようとも、最終的に勝利するのは正義であるということを証明するために、来夏の参議院選挙に向けて全力で戦ってまいります。

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